グッドウォーキン上田が指南! 革×刺繍のオリジナルキャップ。
刺繍芸人としておなじみのグッドウォーキン上田さんを講師に迎え、革の端材と刺繍でオリジナルのキャップをつくるワークショップを開催。さらに、若手タンナー(革をつくる職人)たちから、革づくりについて学ぶ機会も設けられた。
端材の有効活用は、資源ロス削減につながる。
前回のワークショップ同様、今回もまずは革を学ぶことから始まった。教えてくれるのは、兵庫県姫路市の高木地区に工場がある金梅の金田章吾さん、セナレザーの中森赴人さん、金田染革所の金田拓也さんの3人。兵庫県姫路市は昔から皮革産業が盛んな地域で、全国有数の皮革産地のひとつだ。タンナーである彼らがいちばん伝えたいのは、「革は食肉の副産物」だということ。
「革は昔からある素材ですが、その原料は僕らが食べている牛肉や豚肉の副産物である皮です。この“皮”を腐らないように“鞣す”ことで、靴やバッグ、小物などに使う“革”に生まれ変わります。また、皮下にあるコラーゲンは、医療品や化粧品、健康食品、犬のおやつなどに使われています。つまり、皮革は捨てるところのない、エコでサステナブルな天然素材なんです」
ところが、そんな優れた素材にも大きな悩みが。それは革製品として使われなかった部分=端材が生じるということだ。
「この1枚の革から製品となるのは、首から下のお腹の部分がほとんどです。たとえば、足の部分などは、繊維が粗く強度が弱いため、どうしても用途が限られてしまいます。先ほど『皮革は捨てるところがない』と話しましたが、この部分も使わなければ、動物たちの命を無駄にすることになります。だからこそ端材を有効活用しようとさまざまな取り組みが行われています。今回のワークショップも、資源ロス削減に繋げる取り組みのひとつです」
刺繍の可能性をさらに広げる、革の魅力。
革の知識を深めた後は、いよいよグッドウォーキン上田さんとともに作品づくりへ。参加者それぞれが選んだ革を好きな形に切り、その周りを刺繍していく。難しいステッチはいっさいなく、しかも上田さんのアイデアで革の穴開け用のスクリューパンチが用意されていたので、初心者でも簡単に取り組めた。
「僕も事前につくってみました。実際にやってもらうと分かるのですが、チクチク縫うというよりも、革を切ったり、穴を開けたりするので、図工に近いかもしれないです。簡単にできるので、皆さん、安心してください」
上田さんの言葉に勇気づけられ、参加者は各々好きな色のキャップを選び、刺繍枠をセットしていく。そして革の端材を手に取り、自身が思い描くモチーフを表現できるか、革の色や質感をじっくりと確かめる。なかには、革の仕上げ加工からインスピレーションを得て選ぶ参加者もいて、早くも独創的な作品が生まれる予感が。
「実は、僕も革に刺繍するのは今回が初めてなんです。革を大きく使ったり、立体的に使うとまた違った魅力が出てくるので、素材としておもしろいなと思います」と上田さん。革に開ける穴の位置や刺繍針の刺し方を参加者に丁寧に教えてくれる。和気あいあいとした雰囲気のなか、作業は順調に進んでいく。
「刺繍糸の色を選ぶときは、革と同色でもいいですし、逆に反対色にしてステッチを目立たせるという方法もあります」。上田さんのアドバイスに耳を傾けながら、黙々と針を動かす参加者たち。失敗したくないという思いももちろんあるだろうが、それ以上に革という天然素材に真摯に向き合い、完成へと近づくものづくりの醍醐味を味わう気持ちもあるようだ。ワークショップも終わりに近づいたころ、参加者たちの手にはそれぞれの思いが詰まったオリジナルキャップが出来上がっていた。
参加者たちからは「こんなに革の種類があることを知らなかった」「とても楽しかったので、このモチベーションを保つためにも、ほかの革でもやってみたい」といった声が寄せられ、ワークショップ終了後、残った革をお土産として持ち帰る人も。うれしそうにできたばかりのキャップを被る参加者の姿から、今回のワークショップが、これまでの用途とは違った革の新たな活用方法を見い出すよい機会であったことが伝わってきた。
グッドウォーキン上田 goodwalkin Ueda さん
滋賀県彦根市出身。20歳で大阪NSC(吉本総合芸能学院)に入学。コンビやピンを経て、2015年に同期の良平さんとグッドウォーキン結成。 17年より“刺繍芸人”として、オリジナル刺繍キャップ「goodwalkin」をはじめ、 お笑い芸人の枠を超えて活動している。
Instagram: @uedaayumu
金梅
兵庫県姫路市花田町高木50
https://kanaume.jp/
金田染革所
兵庫県姫路市花田町高木202-1
セナレザー
兵庫県姫路市花田町小川字長谷1152-11
http://www.senaleather.jp/
photography: Sakai De Jun, text: Natsue Ishikura