革の端材と軍手を使って、エコでキュートな犬のぬいぐるみづくり。

革に触れ、革について学び、革を使ったものづくりを行う、革きゅん読者参加型のイベントの第4弾が2025年1月に開催された。今回はぬいぐるみ作家の金森美也子さんを講師に招き、革の端材を使って犬のぬいぐるみを制作するワークショップを行った。

ひとつとして、同じ革はない。

まずは若手タンナーによるミニ講義からスタート。革づくりについて教えてくれたのは、革の4大産地のひとつである兵庫県姫路市から駆け付けた、アークレザージャパンの寺越博之さん、オールマイティの水瀬大輝さん、セナレザーの中森赴人さんの3人だ。

ミニ講座を行う若手タンナーたち。左から、アークレザージャパンの寺越博之さん、セナレザーの中森赴人さん、オールマイティの水瀬大輝さん。

「私たちが牛や豚の肉を食べた後の畜産副産物である皮は、そのまま放置すると腐って廃棄物となってしまいます。その皮を腐らないように鞣して長持ちする革をつくるのがタンナーの仕事です。革製品のために動物を殺すことはありません。革は動物の命を無駄にせず有効活用した、サステナブルな天然素材なんです」

しかし、その革からどんなに余りが出ないように工夫しながら革製品をつくったとしても、どうしても端材が生じてしまうという。3人は、実物を見せながら説明する。

「動物の皮には、個体差があります。一体一体に異なるシワやシミ、キズがあり、さらには革を製造する過程で生じる穴などもあります。最近では、これらは天然素材の証として認識されるようになってきましたが、残念ながらいまでも革製品づくりには適さない端材として扱われ、最終的には捨てられてしまう可能性もあります。だからこそ、端材を少しでも有効活用するために今回のワークショップも開催しています」

馬革を中心に製造するアークレザージャパンの寺越さんが持参した、革製品として使用された後の馬革の端材の一部を参加者に広げて見せる、オールマイティの水瀬さん。

革の個性が、ぬいぐるみの表情を決める。

革について理解を深めた後は、いよいよ金森さんとともにぬいぐるみづくりをスタート。ぬいぐるみのベースとなるのは軍手だ。軍手の形状を生かすことで縫う作業を減らし、簡単につくることができるという。

参加者たちはまず軍手を裏返し、印付けに沿って縫い進める。タンナーの3人も一緒に参加し、和気あいあいとした雰囲気のなかで、順調に作業は進む。

参加者全員に目を配りながら、ひとりひとりに丁寧にレクチャーを行う金森さん。

縫い終わった軍手を表に返すとそれぞれ頭と胴体に。縫製が得意な人から初心者まで、参加者全員が楽しく取り組んだ。

綿を詰めて頭と胴体の形ができたら、いよいよ革の登場だ。革は質感や色、厚みなど、ひとつとして同じものはなく、まさに一期一会。参加者たちは、自分のぬいぐるみのためにお気に入りの革を見つけようと、夢中になって革を選ぶ。

さまざまな革の端材を自身の作品にあてがい、完成形をイメージする参加者たち。「いろんな革に触れられて楽しかった」との声も。

型紙を使って革に印を付け、耳と鼻の形にカット。縫わずにボンドなどで貼り付けることも可能だ。

そして最後に、革でつくった首輪を付けて完成! 革は丈夫で柔らかく、加工しやすいため、参加者は独自のアレンジを加えてオリジナルの首輪づくりに取り組み、可愛らしい作品が次々と誕生した。

明るい色の革を細く裁断して首輪にしていく。

明るい黄色の首輪は、革に切り込みを入れて前で留めるスタイル。革でつくった斑点もポイント。

革を編み込んだ首輪で、おしゃれなワンちゃんに。耳が立っていてわんぱくさも感じられる。

手の込んだ首輪が目を惹く。耳には柔らかい革を使うことで自然に垂れて、穏やかな雰囲気のワンちゃんになった。

友人同士で来場した参加者は同じつくりの首輪にしてペアルックに。

あえて首輪をつけない参加者も。眉毛と口が付いてキャラクターっぽい愛らしい仕上がりに。

金森さんはこれまで数多くの作品を手がけてきたが、軍手のぬいぐるみに革を使うのは初めてだったという。
「ワークショップに向けてどのように革を使おうかいろいろと試してみましたが、革ならではの温かみがあり、加工もしやすくとても便利な素材でした。これからも積極的に取り入れたいと思います」

また、参加者たちからは「同じ軍手でつくったのに、選んだ革でつくった耳や鼻、そして首輪でまったく表情の違うぬいぐるみができておもしろかった」「革の加工の仕方でこんなにも見た目や触り心地が違うんだと驚いた」「革がエコな素材だと知り、いままで以上に大切に使っていきたい」といった声が。ワークショップ終了後に、革についてタンナーに積極的に質問する姿も見られた。

自分でつくれば愛着もひとしお。ぬいぐるみづくりを通して革について知り、革をよりいっそう大事に使うきっかけになるワークショップとなったようだ。

金森美也子さん(ぬいぐるみ作家)
1998年より古着や日用品を使った動物のオブジェやぬいぐるみの制作を始める。展示や書籍で発表するかたわら、ぬいぐるみづくりのワークショップも行っている。著書に『手袋いぬと靴下ざる』『白くまワールド』(文化出版局)『古着で作るぬいぐるみ』(産業編集センター)『おしゃれぐまクゥクゥのたのしい一日』(小学館)などがある。
https://nuigurumiyako.com/

アークレザージャパン
兵庫県姫路市花田町高木字山溝筋210
https://www.kawa-ichi.jp/tanner/alj/

オールマイティ
兵庫県姫路市花田町高木290
https://almighty-ame.jp/

セナレザー
兵庫県姫路市花田町小川字長谷1152-11
http://www.senaleather.jp/

photography: Mirei Sakaki

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