革コートの制作舞台裏も! マリエのトークショー開催。

9月上旬に東京・新宿で開催されたクリエイションの祭典『NEW ENERGY(ニュー エナジー)TOKYO』に革きゅんが初出展! 革きゅんのSTORYでマリエさんが手がけた「エターナル(永遠の)コート」と、コートから生まれる革小物が展示された。

『NEW ENERGY TOKYO』での革きゅんブース展示風景。

『NEW ENERGY TOKYO』はファッション・ビューティ・エシカルなどをテーマにした、総勢250組もの出展者が集うイベント。会期中の9月9日には、マリエさんのトークショーが行われた。架空の街をイメージした会場の中央に位置する交差点にマリエさんが登場。作品のひとつであるファーストシューズを手がけたBartam(バータム)の薮内直也さんと、当時を振り返りながら作品に込めた想いを語った。

レザーの可能性を伝えたい。

トークショーがスタートすると、マリエさんは来場者に、STORYで制作したコートを紹介。そしてそのコートから作ることのできる7つのレザーアイテム−−ファーストシューズ、トートバッグ、ポシェット、財布、タブレットケース、犬の首輪、キーケースを来場者に見せながら「一着のコートから、いろいろなものができるんです。革は世代を超えて長く使える素材であるということを見せたい、というのが出発点でした」と語った。

コートと7つのレザーアイテムについて紹介。

続いて制作過程をレポートした4つの動画が順番に上映された。1本目の動画を来場者と一緒に鑑賞後、今回のアイデアはどのように生まれたかについて、マリエさんは次のように語った。

「過去のSTORYの記事も見て、私だからできることとして、自分のブランドでも発信してきた“モノを大切にする”ということを伝えたいと思いました。サステナブルという言葉がこれだけ使われるようになった時代ですが、本革は使う人によって使い方を変えられます。最後まで大切に使える可能性を見せることで、革という素材がもつ魅力を最大限に伝えられたらと思いました。

本革は自然からの恵みです。長く大切に使っていける、サステナブルな素材だと認識しています。1話目の撮影は、ちょうど娘がお腹にいたときだったのですが、STORYでの取り組みを通して、自分のブランドで発信してきた環境や未来へのメッセージは変わらないけれど、自分にとって大切な存在をしっかり守っていきたい、という思いが強くなりましたね」。手に取ったファーストシューズを見つめるマリエさんの目には、未来に繋がる革という素材への敬愛と、娘さんへの慈愛が重なる。

トークショーは『NEW ENERGY TOKYO』会場中央の特設ステージにて行われた。

Bartamの薮内直也さん(左)とマリエさん(右)。

2本目の動画は兵庫県たつの市のタンナー、ヤマクニを訪れた時のものだ。「実際にタンナーさんからお話を伺って、1枚の革に対する手のかけ方がとても丁寧なのに驚きました」とマリエさん。マリエさんが選んだ革はナチュラルな風合いを生かした、特に肌触りの柔らかな「染料仕上げ」と呼ばれるもの。動画のなかでヤマクニの代表、坂本英和さんはこの革について、人間でいうところの“すっぴん”と表現していた。「しっかり手をかけてあげることで、“美しいすっぴん”になるところは、人間の肌と同じですね」とマリエさん。「この革が将来いろいろなものに加工できる可能性を見せたかったので、使う人たちがその人なりの色に染めていってほしいという思いを込めて、プレーンな色味にしました」

コートの裏側のレーザー刻印を来場者に見せるマリエさん。

3本目の動画では、コートにレーザー加工を施す工程と、ファーストシューズを制作したBartamの薮内さんのアトリエを訪れた時の様子が紹介された。「ナスカの地上絵のよう」とマリエさんが言うファーストシューズのパターンは、コートの裾に配置されている。「1枚のコートからどれだけのアイテムをつくれるのかを、コートの裏に表現しています」。複数アイテムのパターンが、パズルのようにコートの裏側に刻印されている。

刻印を手がけたのは、岡山県倉敷市でデニムの染色や洗い加工を行う豊和だ。「デニムの加工には大量の水とたくさんの職人さんの労力がかかりますが、レーザー加工だと約15秒で終わります。大切な水を守り、職人さんの体調にも優しい技術です。1枚のコートとそこからできるアイテムには、いろんな方の技術と、私たちが住む環境の未来への思いが込められています」。サステナブルな素材である革を加工する工程も、環境に優しいものであってほしい−−そう願うマリエさんならではのコラボレーションだ。

ファーストシューズのエピソードを語る薮内さん。

新しい命を授かったマリエさんにとって、特に思い入れのあるアイテムのひとつがファーストシューズだった。それを手がけたのがBartamの薮内さんだ。薮内さんがファーストシューズを初めて奥様と一緒につくったきっかけも、息子さんが生まれたことだったという。いまはふたりの子どものシューズを、玄関の棚に大切に飾っている。「もう明らかに履けないくらい育ったのに、子どもたちが時々持ち出して履こうとする姿はとても微笑ましいです。私たちの思いが伝わっていると思いますし、そういうやりとりも含めて、よい思い出が増えていますね」

今回のコラボレーションについて、薮内さんは次のように語る。「普段は自分で選んだ革を使っていますが、今回マリエさんが選んだ革で制作したところ、優しく柔らかい雰囲気のファーストシューズに仕上がりました。外で靴を履く前に、家で履いてもらうシューズとしてよい素材だと、新しい発見でした」

「エターナルコート」と、コートから生まれる革小物。

最後の動画は、完成した「エターナルコート」を纏ったマリエさんが海辺を歩く姿をとらえたものだ。本革という素材についてあらためて聞かれたマリエさんは、来場者に向かってこう語りかけた。「革は自然からの恵みとしていただいたもの。命の重みを感じながら、できるだけ長く使えるようにデザインしていきたいと思いました。『革きゅん』のプロジェクトは、そのことについてあらためて考える機会になりました。制作するものにまつわるストーリーをしっかり伝えることで、使ってくれる人たちが大切にしてくれることを願っています」

マリエ Marie さん
1987年生まれ。10歳の時にスカウトされ、モデル活動を開始。2005年に雑誌「ViVi」(講談社刊)の人気モデルとして一躍注目され、数々のショーに出演。その後TVのバラエティ番組などでレギュラー出演を務める。11年、ニューヨークのパーソンズ美術大学に留学しファッションを専攻。帰国後に自身のファッションブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカル・マリエ・デマレ)」を立ち上げ、デザイナーとして活動。環境省「つなげよう、支えよう森里川海アンバサダー」を務める。22年に女児を出産。
https://pmdonline.jp/
Instagram:@pascalmariedesmarais_pmd

薮内直也 Naoya Yabuuchi さん
2019年にバータム(Bartam)設立。医療用の靴やレディス靴のパタンナーを務めたデザイナーによるファーストシューズが人気。クッション性を追求した製法や足当たりのいい素材にこだわった本格派。シンプルなバブーシュやカードケース、オーナメントなども制作。
https://minne.com/@bartam-0826
Instagram:@bartam0826

Photography: Mirei Sakaki

BACK TO LIST

PAGE TOP