伊藤健太郎の、“唯一無二の革ジャン”が完成。

「かっこいいですね! 想像をはるかに上回るものが出来上がりました」

普段からカジュアルに愛用してきたコーチジャケットを、レザーでつくってみたい。伊藤健太郎さんのそんなシンプルな発想から、このプロジェクトは動き出した。理想のジャケットにふさわしい馬革を選び、皮から革へと生まれ変わらせる姫路のタンナーの元を訪れ、さらに東京の縫製アトリエで職人たちと対話を重ねてきた。さまざまな手仕事に触れてきた時間を思い返すように、伊藤さんは完成したばかりのジャケットを愛おしそうに眺め、静かに袖を通した。

袖を通してわかる、レザーの立体的な美しさ。

採寸どおりに仕立てられたレザージャケットは、スレンダーながら鍛えられた伊藤さんの身体にぴたりと寄り添い、動くたびに艶やかな光を返してくる。ボディの茶芯レザーに、襟の茶金色のスエード。2種類の馬革のさりげないコントラストは、伊藤さんのこだわりそのものだ。

「ずっしりと重いものになると思っていたんですが、驚くほど軽いです。フルレザーなのに、こんなに着やすいんだって。正直意外でした。それに、動いたときの立体的な革の表情がやっぱりいいですね。馬革のやわらかさは見てきたけれど、袖を通して初めてわかる、立体的な革の美しさがあります」

伊藤さんの身体ぴったりに仕上がったレザーのコーチジャケット。オーダーメイドならではの技術だ。

背面にレーザー彫刻で施された「Appreciate Life(アプリシエイト ライフ)」のロゴ。

1枚のスケッチからスタートし、職人達との対話を経て細部が形づくられたレザージャケット。完成した一着には、伊藤さんの美意識が隅々に息づいている。

「茶芯レザーのかっこよさと襟のスエードのやわらかさの対比は、どうしても入れたかったんです」

背中と左胸には、異なる彫り方で刻まれた「Appreciate Life(アプリシエイト ライフ)」のロゴが、控えめな存在感を放っている。背中には大胆なサイズを繊細な線の彫りで、左胸には控えめに主張する面の彫りで表現。光の角度によって表情を変えるロゴが、レザーの上質な雰囲気をいっそう際立たせている。茶芯の特性を生かし、レーザー彫刻で革表面を薄く彫り込むことで、ロゴとなる“茶色”を浮かび上がらせる技法は、職人との対話から取り入れられたものだ。

「パーカー、ネルシャツ、インナーにGジャンも似合いそう……」。シンプルだからこそコーディネートの幅は無限だ。

胸元のロゴは、背中とはあえて違う加工に。スエードの襟は肌触りがよく、色合いと素材感の両面から、ジャケットにあたたかみを添えている。

大好きなレザー、その裏に隠された物語に触れる。

「ジャケットの裏地には、好きなメキシカンラグを使用しているのがポイントです。この裏地は取り外して裏返すと、インナーベストになるんです。ベストのパイピングとポケットにも馬革が使われていて、ボタンは鹿の角でつくってもらいました」

馬革と鹿角のボタン。遊び心と愛着を込めて、伊藤さんはこの一着を“馬鹿(バカ)ジャン”と命名した。元々大好きだという革に触れ、楽しみながら制作に向き合う中で、最初から心に決めていたロゴの「Appreciate Life」の意味に想いが重なる瞬間が幾度も訪れた。それはレザージャケットを制作するにあたって最も大切にしていたテーマ、「命への感謝」だ。

「塩漬けの皮の状態を見せてもらったことが、ものすごく心に残っています。一枚の皮をなめし、一着の服を作り上げるために、さまざまな職人が強い想いを持って向き合っている。その情熱に触れて、革に対する自分の感覚が大きく変わったんです」

レザーに携わるさまざまな人と出会う中で、素材の特性や技術を理解することにとどまらず、革そのものへの想いや動物への慈しみも深まったと、伊藤さんは感じている。

裏地は取り外して裏返すと、インナーベストに。ボタンに鹿の角が使われている。

軽やかなレザージャケットだからこそ、インナー次第でさまざまな印象を楽しむことができそうだ。

まとう度に感じる、生命へのリスペクト。

「レザーが食肉の副産物であることは、まだ知らない人も多いかもしれません。命を無駄にしないという意味でも、副産物として出た皮を丁寧に加工して、僕たちがジャケットや小物として使っていくことも、”命への敬意“なんだと改めて感じました。僕が持っているベルトや財布にも、その裏にある命の物語を意識するようになりました。革は丈夫だからこそ大切にする、という想いはもともとありましたが、命とともにいろんな人の想いが重なっているからこそ、大切にしたいと強く思えます」

背中と胸に刻まれた「Appreciate Life」。その言葉を選び取った感覚を、これからもずっと忘れたくないと語る伊藤さんの横顔には、俳優として、そしてひとりの人間として、命の物語をしっかりと受けとめたような凛とした静けさが滲んでいた。

着込むほどに感じられるであろう、レザーの経年変化も楽しみだという伊藤さん。

伊藤健太郎さん
1997年生まれ、東京都出身。モデルを経て、10代で俳優デビュー。『今日から俺は!!』で一躍注目を浴び、映画『惡の華』『とんかつDJアゲ太郎』などの話題作に出演。映像・舞台問わず、ジャンルレスに活躍を続ける注目俳優のひとり。2024年に『光る君へ』で大河ドラマ初出演を果たし、25年には、映画『少年と犬』『#真相をお話しします』『ストロベリームーン』、ドラマ『未恋〜かくれぼっちたち〜』『彼女がそれも愛と呼ぶなら』などに出演。公開待機作にWOWOW×Lemino連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』などがある。
Instagram: kentaro_official_
X: kentaro_account

photography: Sayuki Inoue, movie director: Mitsuo Abe, cinematography: Keigan Yako, styling: Yuya Maeda, hair & makeup: Kenji Takeshima, text: Miki Suka
collaboration: Kadoya syoten, No, No, Yes!

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