日本のタンナーの誇りを刻んだ、JLPタグって?

家紋のようにデザインされた「革」の文字があしらわれた、小さなタグ。これは国内で生産された天然皮革を使って製造された革製品にのみ付けることが許される「JLP(JAPAN LEATHER PRIDE)タグ」だ。日本のタンナーの誇りとジャパンレザーの品質を証明するJLPタグ、ここに込められた思いとは? タグが作られた背景を探ってみよう。

国内で生産された天然皮革の証し。

全国で300社ほどあるという日本のタンナー。兵庫県、和歌山県、東京都を中心に、革製品の素材となる革を生産している。日本のタンナーの高い技術力、特に素材の色味や光沢を均一に仕上げる繊細な仕事ぶりは世界的にも高く評価されているにもかかわらず、これまで日本のタンナーの技や日本らしいものづくりを消費者に披露する機会はほとんどなかった。

ドラムと呼ばれる太鼓型の機械は、鞣しや染色、柔らかくするための空打ちなど、さまざまな用途に使用される。経験を積んだタンナーたちが大小のドラムを駆使して革を生み出していく。photo : SADAHO NAITO

タンナー業で使用する機械はヨーロッパから伝えられたものが多いが、この「バタフリ」と名付けられた機械は日本のオリジナル。革を上下に高速で振ることで揉みほぐして柔らかくする。photo : SADAHO NAITO

タンナーが手塩にかけた天然皮革の魅力を多くの人に知ってもらいたいと2014年に商標登録されたのが、JLPロゴマークで、そのマークをもとに製作されたのがタグである。製作した一般社団法人日本タンナーズ協会では「日本の天然皮革」というブランドを守るべく、タグの使用について厳格なルールを設けている。

JLPタグは大(H82.6mm×W50.4mm)と小(H68mm×W42mm)の2サイズ。

ジャパンレザーの魅力を伝えるために。

ロゴマークとタグが生まれた背景を、国内外の皮革産業の事情に詳しい日本タンナーズ協会の森脇繁行会長に解説いただこう。

「タグを使用できるのは、原皮およびウェットブルーから自社工場で再鞣しと染色・加脂を行っており、かつ排水処理を適正に行なっている日本のタンナーのみ。使用許可を得たタンナーが原皮およびウェットブルーから自社工場にて再鞣しと染色・加脂を行った革素材を表面積の60%以上に使用し、国内で製造した革製品だけにタグを付けることができます。つまりこのタグは日本のタンナーたちの誇りともいえます。ものづくりへの姿勢はもちろん、適正な排水処理を行っていること、あるいは食肉の副産物である皮を無駄にしたくないという思いなど、環境や社会への意識を高めてもらうことで、ジャパンレザーの価値が高まると考えています」

2019年5月、第100回 東京レザーフェアに日本タンナーズ協会が出展した際の展示風景。協会のさまざまな取り組みの一環として、JLPロゴマークおよびタグを紹介。

現在、このタグを使用しているのは全国で58社、これまでに発行したタグの数は40万枚以上。タグができたことでタンナーたちの意識にも変化が生まれた。

「天然皮革というとイタリアのものが有名ですが、安定した品質を誇るジャパンレザーも十分競争力があるのです。日本のタンナーは昔気質の職人が多く、いいものを作るという気概はあるものの、革問屋やメーカーとのやりとりがほとんどだった背景もあって、消費者が何を求めているのか、その動向には疎かったように思います。市場に出回る製品にJLPタグが付いて『メイド・イン・ジャパンのレザーである』というアピールを広く行うようになったことで、消費者目線のものづくりを心がけるようになってきました」

さまざまな色に染色された革。色の安定性も、日本のタンナーが世界に誇る技術のひとつだ。photos : SADAHO NAITO

実際、メーカーだけでなく小売から問い合わせがあってタンナーが使用許可を申請するという事例も相次いでいる。今後は消費者から求められるような唯一無二のブランドを目指してほしい、と森脇さん。

「その先に見据えるのは海外のマーケットです。高い品質、繊細な仕事を武器に、メーカーとタッグを組んで海外にもジャパンレザーの魅力をアピールしていきたいですね」

柔らかく、強く、美しく。日本の革はさらなる高みを目指す。

JAPAN LEATHER PRIDE
www.japan-leather-pride.com

realization : RYOKO KURAISHI

BACK TO LIST

PAGE TOP