国産天然皮革の魅力を世界に伝えたい! デザイナー姉妹の挑戦。

「アーバンボビー(URBAN BOBBY)」は素材から縫製まで、メイドインジャパンにこだわるレザーブランド。国内のタンナーが作りあげたオリジナルの素材を使って、ロングライフデザインを生み出すデザイナー兼革職人の伊地知真沙子・朋子姉妹が、日本の天然皮革の魅力を語ります。

熟練の革職人である父の仕事にインスパイアされて。

大阪にアトリエを構える「アーバンボビー」は、デザイナーにして革職人の伊地知真沙子・朋子姉妹と、この道40年という熟練の革職人である父親・文昭さんによる家族経営のレザーブランド。ニューヨークでファッションを学び、その現場をリアルに体験した姉妹が、父親のものづくりにインスパイアされてスタートした。
「もともとファッションを志していた私たちが父の仕事を間近に見るなかで、自分たちらしいレザーのバッグを作ってみたいと思ったことがブランド立ち上げのきっかけでした。実家にあるミシンと父が使っていた道具で地道に始め、いまも変わらず家族3人による完全手作業でレザーアイテムを製作しています」

パリのセレクトショップで発売するオリジナルのカードケースを企画中の姉の真沙子さん(左)と妹の朋子さん(右)。「ひょうご天然皮革(HYOGO LEATHER)」とのプロジェクトで、カラフルなバイカラーのデザインになる予定だ。

製作数が限られるから、製品の発表と販売は、オンラインショップと年1回のポップアップストアのみ。一時期はセレクトショップに卸していたこともあったが、製作が追いつかず卸もストップした。それでも現在のスタイルを貫くのは「天然皮革のよさをきちんと伝えるため」という。

こだわりは、国産の天然皮革と全工程手づくり。

「アーバンボビー」のこだわりは、外注はいっさい行わないこと。国内で鞣した天然皮革だけを使うこと。
「レザー製品の魅力は使えば使うほど味わい深くなり、使い手の個性がそこに刻まれていくところ。年を経て新品よりももっと魅力的になる製品だって少なくありません。私たちはみなさんに長く使ってもらえるよう、外からは見えない補強の部分や内部の構造についてもアフターケアを考えた仕様で作っています。だから外注はできない。シンプルなデザインに徹しているのも、肌触りやなじみのよさといった革本来の持ち味を感じてほしいからなんです」

ブランドのスタート時から偶然にも国産の本革だけを仕入れていたが、ある展示会で知り合った卸先が国産の天然皮革の魅力を海外に発信するプロジェクトを手がけており、そのプロジェクトに参加したことがきっかけで国内のタンナーと親交を深めるように。タンナーの元に足を運ぶ中で、タンナーそれぞれに得意な加工があり、天然皮革は加工によってまったく異なる表情を纏うということを理解する。そうして天然皮革の表現の幅広さに圧倒された。

「あのタンナーさんはこの加工が得意、とか、こういうデザインにしたいからこのタンナーさんに相談してみようとか、デザインと素材が密接に関わるものづくりが可能になりました。いまでは『アーバンボビー』オリジナルの革素材を作ってもらうまでに。いつもはデザインありきで製作していますが、タンナーさんに見せていただいた革があまりにもきれいで、その素材を生かしたデザインが生まれることもあります」(真沙子さん)

「革ができるまでの背景を伺ううちに、国産の本革を使って国内でものづくりを行い消費者に届けることが、メイドインジャパンのレザーの魅力を広めるお手伝いになるのではと思いいたったんです」(朋子さん)

シボ型押し、クロコ型押し、ガラスレザーと、国内タンナーの加工技術のレベルの高さを裏付ける素材の数々。これらは親交のあるタンナーに特別に作ってもらった、「アーバンボビー」のオリジナル素材だ。

ハイブランドでおなじみのイタリアのレザーもきれいだけれど、日本のレザーだってそれに負けないくらい素敵、と伊地知姉妹。特に日本のタンナーは優れた加工技術が持ち味だとか。
「日本のタンナーは傷のない原皮の加工技術に優れているのはもちろんのこと、傷の多い原皮に型押しやツヤ加工を施して、傷がわからないくらいきれいに見せてくれるんです」(真沙子さん)

命を無駄にしない革づくり。

タンナーとの親交により天然皮革が持つ奥深い魅力に開眼したふたり。けれど、革への理解がもたらしたものはそれだけではない。
「たつの市と姫路のタンナーが集まるイベントに審査員として参加したことがあったんです。その時、あるタンナーさんが『僕たちが鞣す原皮は、食肉の副産物。廃棄される運命にあったものをいただいて加工を施し、20年、30年という時間をともに過ごしてもらえるようにするのがタンナーという仕事』とおっしゃったんです。ならば私たち作り手の仕事は、革のライフサイクルを形にすることなんだって。このプロセスに関わる自分たちの責任に、背筋が伸びる思いがしました」(真沙子さん)
そんな使命を感じるようになり、環境に対してどういう意識を持ってものづくりに取り組んでいるのか、自分たちの思いをきちんと届けることが大切だと考えるようになった。

時代の流れだろう、ベジタリアンを志向する人が増え、プラントベースミートを食肉に代替しようという動きもある。食肉の需要が少なくなれば当然、副産物である原皮の生産量も減るだろう。
「最近ではフェイクレザーのクオリティも上がっていて、一見しただけでは本革と区別がつかないほどうまくできているものもあります。では、5年後はどうなのか? 本革ならまだまだ現役だと保証できますが、合皮の場合は繊維やビニールがぼろぼろになって廃棄せざるを得なくなります。フェイクレザーとレザー(本革)が混在し、両者を混同してしまう消費者も多く、フェイクレザーを使うことがエコだという風潮もありますが、もののライフサイクルという観点で考えた時、本当にそうなのでしょうか。『アーバンボビー』の使命はすぐに捨てられてしまうものでなく、長く愛されるもの、寿命の長い製品を作ることだと考えています」(朋子さん)

「ひょうご天然皮革(HYOGO LEATHER)」の鮮やかな天然皮革を前にデザインを考える真沙子さん。

「天然皮革という素材を扱っているのだから、環境にも人にも誠実に、責任のあるものづくりを貫いていきたい」という「アーバンボビー」。丁寧に作られたプロダクトを手に取ってみれば、デザイナーたちの天然皮革への愛情を実感できるはずだ。

アーバン ボビーURBAN BOBBY
https://urbanbobby.com
Instagram : @urbanbobby_official
@masako_urbanbobby
@tomoko_urbanbobby

photos : SADAHO NAITO, realization : RYOKO KURAISHI

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