思い出と独創性が詰まった、くっきー!のレザージャケット。

くっきー!(お笑い芸人)

芸人としてのみならずミュージシャンとして、アーティストとして、表現を探求し続けるくっきー!さん。いまでも大好きだというパンクロックを通して出合い、愛用している“ロンジャン”やレザー小物の魅力について語ってくれた。

奥さんに買ってもらった、人生初のロンジャン。

ひと目見て長年愛用してきたことがわかる、年季の入ったヴィンテージの革ジャンを、大切そうにそっと着てくれたくっきー!さん。
「23歳くらいの頃に買いました。当時は古着ブームの真っただ中で、僕も服はたいてい古着屋で買ってたんですけど、革ジャンはどこもアメジャンしか売っていなくて。パンクの人たちって大体ロンジャン着るんです。ロンジャンはアームが細くて、アメジャンは太い。裾にダブルバックルベルトの付いたロンジャンはシルエット的にすげえかっこよくて、ずいぶん探してやっとこいつを見つけました。ちょうど誕生日が近かったので、嫁はんに買ってもろたっていう心温まるエピソードもあります(笑)。

うれしくて着倒してたので、色も当時から変わっているし、本当は定期的に油を入れてメンテナンスしないといけないんですけど、それはあまり好きじゃなくて。自分の形に合わせてシワが入ってくるこの感じがかっこええんですよね」

ロンジャンはイギリスで、アメジャンはアメリカで発展してきた歴史があり、くっきー!さんが特に惹かれるのはロンジャン。家には20着も革ジャンがあり、もはやコレクションと呼べる域だ。「今日はどいつ着ていったろってね、耳当てて聞くんですわ。『今日収録に行くけどどうするー』ゆうて(笑)。革ジャンはサイズ感と革質が大事ですね。長く着ていると照りが出て、味があってかっこええのは馬革だと思います。すぐに味が出て楽にかっこよくなるのが羊革ですね」

高校時代に憧れた、パンクロッカーの必需品。

ハードコア・パンクのマストアイテムだというバンダリアポーチは腰に巻くベルト仕様になっており、くっきー!さんが纏うとたちまちその着こなしに迫力が増す。20年ほど前に買い、ライブに行くときに着けていたという。「僕らは五連ポーチって呼んでます。大阪の店で買いました。ハードコアのミュージシャンがファッションとして着けるので、それに憧れて。タバコや鍵を入れたり、すごい便利です。でもなかなか日常では着けないですね。意味わかんないじゃないですか、普段着でこれは(笑)」

オリジナリティあふれる、リメイクの鋲ジャン。

元々はシンプルな革ジャンを、ペインティングと鋲でリメイクしたという一着も。「これもロンジャンで、最初は普通に着ていたんですけど、徐々に新しいロンジャンが増えていった時に、“カスタム要員やな”って」

いたるところに描かれたバンドのロゴや鮮やかなブルーの袖は、ポスカやアクリル絵の具を使ったという。一度ペイントし、乾いたら擦って味を出す。おびただしい数の鋲を打つのもひとつひとつ手作業だ。そんな地道な作業を、時間を忘れるほど夢中でやっていた。
「高校生の頃から、先輩に頼まれて革ジャンの裏に絵を描いたりしていたんですよ。パンク系の先輩っていかついので、下手こけないし速さも求められる。でも『お前、うまいらしいな、描けや』って言われたら、僕もうれしいじゃないですか。その経験がいまに役立っているかもしれないですね(笑)」

憧れのウルフズヘッドのキーホルダー。

最後に紹介してくれたのは、熱狂的なファンをもつブランド/ヴィンテージショップ、ウルフズヘッドのキーホルダー。

「ガレージパンクっていうジャンルがあって、その人たちはスタッズベルトを着けるんですよ。革ジャンの隙間からスタッズベルトがギラギラ光って見えるのがかっこよくて。当時はウルフズヘッドがスタッズベルトのちょうどど真ん中で、欲しくて欲しくてたまらんくて。でも全部手打ちでヴィンテージのスタッズを入れてはるんで、ええ値段するんです。唯一買えたのがこのキーホルダーでしたね」

もし自身で革アイテムを作るなら、フルレザーのマスクを作ってみたいというくっきー!さん。「口と目と鼻だけ開いてて、あとは全部鋲が付いてる、ギラギラのフルレザーマスクを作りたいですね。ビッタビタの真空状態にしたいんですよね、脱いだ時にパン!て音鳴るくらい(笑)」

ファッションとしてはもちろん、くっきー!さんにとって自身の生き方や美学においても、パンク精神を体現するレザーアイテムは大切な存在といえそうだ。

くっきー! Cookie!
1976年、滋賀県生まれ。1994年にロッシーと野性爆弾を結成。自作の小道具を使用したコントで人気を集める。著書に『口だけ紳士と6つの太陽』(ヨシモトブックス刊)、『野性爆弾くっきーの[激似顔マネ]図鑑』(扶桑社刊)など。アーティストとしても活動しており、これまで『超くっきー!ランド』、『COOKIE 野性爆弾くっきー! SOLO EXHIBITION』など展示も開催。
Instagram : @nikuguso_taro

photography: Asuka Ito interview & text: Rei Sakai

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