くっきー!が、革をつくるタンナーを訪問。
細やかなオーダーに合わせた革をつくる。
くっきー!さんを工場に案内してくれたのは、オールマイティの社長・水瀬大輝さん。姫路の次世代の製革業を担うキーパーソンのひとりと目される、若き経営者だ。水瀬さんによれば、革をつくる工程は100ほどあるが、大きく分けると「鞣し」「再鞣し」「仕上げ」の3つだという。「鞣し」の工程を終えたばかりの革を見て、くっきー!さんは「こんなに白いんですか!?」と水瀬さんに尋ねた。
「動物が本来もっている色は白なんです。植物の樹液から抽出した、タンニンのエキスをパウダー状にしたものを皮と一緒に『太鼓』に入れて、長い時間叩きます」。「太鼓」とは、鞣しをはじめ革をつくる工程でさまざまな用途に用いられる、大きな回転式機械のことだ。
「『鞣し』という字は『革を柔らかくする』と書くんです。人間が使いやすいように、耐久性をもたせて強度を上げることを『鞣し』と呼びます」と水瀬さん。「そして、くっきー!さんのようにデザインをされる方からの『この色にする』『この柔らかさにする』というオーダーに合わせて変えていくことを『再鞣し』と言います」
「金のライダースもつくれますか?」と興味津々のくっきー!さんに、「金もつくれます」と断言する水瀬さん。「嘘でしょ!? 太陽光浴びたら発光してるみたいに見えるんちゃいます?(笑)神輿が歩いているみたいになりますやん」
受け継がれた鞣しの技術が、クリエイターのアイデアを叶える。
水瀬さんはくっきー!さんに、今回のプロジェクトで使用するためにつくった革を見せた。0.5mmと0.8mmの2種類で、どちらも驚くほど薄い。この革をあらためて見たくっきー!さんは水瀬さんにこう尋ねた。
「前から知りたかったんですけど、革って分厚いのから薄いのまでいろいろありますけど、伸ばしているんですか?それとも漉いているんですか?」
「漉いています。薄く漉くのはとても技術がいるもので、鞣しがしっかりしてないと、薄く漉けば漉くほど繊維が細かくなり、耐久性が落ちてボロボロになってしまうんです。革のクオリティは、鞣しで8割が決まるといわれています。そこで生きるのが、先代たちの培ってきた技術です。僕で5代目になりますが、先代の残したデータを見て試行錯誤しながら取り組んでいます」
今回、くっきー!さんが使ったのは鹿革。それはオールマイティがいま注力している素材でもある。
「鹿や猪、熊は増え過ぎてしまって害獣駆除の対象になっています。京都ではジビエ料理が流行っていて、お肉はいただくけれど、皮は産業廃棄物として捨てられてしまっていたんです。SDGsの観点からも、ジビエレザーとして生まれ変わらせることで、命を無駄なく生かせたらと考えています」
くっきー!さんは水瀬さんに、大切にしていた革ジャンを水で濡らしてシワができてしまったことを打ち明けた。水瀬さんはこうアドバイスする。「そういう時は、まず自然乾燥させてください。そして半乾きくらいの状態になった時に着て、自分の身体で伸ばしてあげるのがいちばんいいと思います」。そう聞いて「よりええ感じに、タイトになりそうですね。ありがとうございます。もう1回洗い直してみます」とくっきー!さん。「革は、濡らせば元に戻るので、ぜひ試してみてください」。革という天然素材の特性と可能性を知り尽くした、革のプロならではの意見に、くっきー!さんも納得した様子だ。
「鞣しの工程がないと、革ジャンも革パンもつくれないわけで、絶対に必要な仕事じゃないですか。今回は支えていただいて、ありがとうございます」
次回は、ついにレザーのオールインワンが完成! 革のポテンシャルを最大限に生かした、唯一無二のレザーアイテムの全貌とは? くっきー!さんが着用し、愛車と一緒に登場予定だ。
くっきー! COOKIE! さん
1976年、滋賀県生まれ。1994年にロッシーと野性爆弾を結成。自作の小道具を使用したコントで人気を集める。著書に『口だけ紳士と6つの太陽』(ヨシモトブックス刊)、『野性爆弾くっきーの[激似顔マネ]図鑑』(扶桑社刊)など。アーティストとしても活動しており、これまで『超くっきー!ランド』、『COOKIE 野性爆弾くっきー! SOLO EXHIBITION』など展示も開催。
Instagram : @nikuguso_taro
photography : Shin Ebisu director & photography: Mitsuo Abe editing & text: Tomoko Kawakami collaboration: Almighty