つくり手の意思を感じる、SKY-HIのレザーアイテム。

SKY- HI (アーティスト、プロデューサー、CEO)

パフォーマンスグループAAA(トリプル・エー、現在活動停止中)のメンバーでラッパーとしても活躍するSKY-HI(スカイハイ)さんは、昨年ボーイズグループ発掘オーディションを主催。その模様はテレビで放映され、プロデュースしたBE:FIRSTの曲はトップチャートを駆け上がった。そんなSKY-HIさんが昨年12月某日、AAAのドームツアーや主宰レーベルのアーティストデビューを控えるなど多忙を極める中、レザーアイテムについての取材に応じてくれた。

黒のレザーの魅力を引き出すスタイリング。

私物のレザーアイテムを携え、全身黒の着こなしでひとりスタジオに現れたSKY-HIさん。現在35歳の彼は自らマネジメント/レーベル会社「BMSG」を立ち上げ、昨年は私財一億円を投じてオーディションを主催。誕生した7人組のダンス&ボーカルユニットBE:FIRSTの曲は日本の音楽業界にセンセーションを巻き起こした。多忙な日々を送るSKY-HIさんが昨年、服を買ったのはたった一度、偶然できた45分の空き時間だったという。

「朝起きて何を着るか、そこにエネルギーと時間を割く余裕がなかったんです。社長という立場上フォーマルなものを用意したり、主催するオーディションを追う番組のカメラに密着されていた時期はわかりやすく会社のロゴが入ったパーカーを着たりしていました。11月にBE:FIRSTのメンバーの誕生日プレゼントを買うために1時間だけスケジュールを押さえていたんです。すぐに贈り物が決まって、残り45分、いましかない、服を買おうと」

束の間の買い物で手に入れた光沢感のあるパンツを合わせて、全身私物のセルフスタイリングでカメラの前に立った。10年以上所有するレザーのライダース、モデルも務めたミハラヤスヒロとFR2がコラボしたレザースニーカー、胸に輝くネックレスはインディアンジュエリーを作るナバホ出身のアーティストから贈られたもの。身に着けるものにも、才能や個性、人との繋がりを尊重するSKY-HIさんらしさが醸し出されている。

「主張はそんなに強くなくてもいい。でもしっかりとした意思の見えるものが好きですね。そして世の中でどんなものが流行っていたとしても、自分がいいと思うものを身に着けるべきだと思います。他者の判断基準が入るのは正しくない。服や小物ってそういうものですよね」

グランジ感のあるスニーカーと、不思議なライダース。

取材場所まで履いてきたスニーカーは、粘土でかたどって手の感触を残したようなヴィンテージ感のあるソールと黒のレザーの組み合わせ。使い込むほどに履く人の足跡を刻んでいく、経年変化するレザーの魅力が際立つ一足だ。

「ソールのグランジ感や退廃的なムードも好きです。作り込んだ感じを見せないのがいい。ブランドのコラボレーションも音楽制作と同じで、お互いが相手の主張に強く共感し合い、それがプロダクトに落とし込まれていたり、会話が感じられたりするものはいいなと思います」

人と物にも見えないコミュニケーションがある。SKY-HIさんの身体になじんだレザーのライダースには、不思議な縁を感じるという。

「このライダースがどんな経緯で自分の手元にやってきたのか、はっきり思い出せないんです。おそらくスタイリストさんから譲り受けたものだと思うのですが、タグもないし正体がわからない不思議な服。でも誰かが一生懸命に作り上げたのは伝わってくる。凝ったデザインで、袖の内側には柔らかいレザーが使われていたり、普通はレザーを使わない部分までレザーだったり。新しいライダースを手に入れても、しばらく着ると誰かに譲ってしまいますが、コイツはクローゼットの新陳代謝をくぐり抜けてずっとそばにいる。もしかして、生きているのかもしれない(笑)」

本革は身に着ける人の個性を刻み、艶や味わいを増しながら経年変化し、何十年と生き続け次世代へと受け継がれる素材だ。その魅力を体感するSKY-HIさんは、今回の取材について次のように話してくれた。

「実はこのインタビューの依頼が来た時、サステナビリティの観点からいまレザーについてどう考えたらいいのか、スタッフと話し合ったんです。リアルレザーは十年単位で使えるから、合皮よりも地球環境にいいのではないかと興味が湧き、話を聞いてみたくて取材を受けることにしました」

闘う男にふさわしい、レザーという素材。

SKY-HIさんの手元のネイルが目に入り、ジェンダーレスなスタイルが好きなのかと聞いてみると「ネイルをしているからですか?」と切り返された。

「自分は“○○らしくない”と言われ続けてきたので、逆に“○○らしく”することにこだわらなくなったんです。自分の根っこのスタンスや哲学が確立されていれば、その上に乗っかる要素はなんでもいい。人が自分に対して抱くイメージはその人に任せて、自分自身を自分で分かってあげることを大事にしたい」と淡々と語る。

18歳でパフォーマンスグループAAAとしてデビューし、ソロでラッパーとしても活動開始。15年以上におよぶ音楽活動には光も陰もあり、本来の自分とは異なるイメージを強いられたことも少なくなかった。

「たとえばアイドルを“商品”と表現したり、“お客さまあってのアイドル”、そんなふうに語られたりすることがあります。でもそんな関係性は存在しないと思う。ある人が秀でている才能を磨き続け、その才能に惹かれる人がいて、コミュニケーションが生まれるだけの話なんです。だから人対人の対等なコミュニケーションの中で音楽を作っていきたい」

SKY-HIさんが立ち上げた会社BMSGのスローガンは「才能を殺さないために」。アーティストが自分らしく才能を開花させられるようにとの想いが込められている。BMSG主催のオーディションを追いかけたテレビ番組の中では、メンバーの将来まで考え抜くSKY-HIさんの熱い言葉も話題になった。

「できたばかりの会社のオーディションに応募してくれたメンバーに対する感謝は、どんなに言葉を尽くしても表せない。自分のすべてを投じたとしても、人生を賭けてくれた彼らの思いと釣り合いは取れないです。だからできることは100%やらないと」

常識をひっくり返す金髪の革命児には、しなやかでタフなレザーアイテムがよく似合う。走り続けるSKY-HIさんの個性と溶け合い、多面的な魅力を放つレザーは唯一無二の輝きを放っている。

「革のよさは、経年変化して自分になじんでいくところ。表面のシワによって光の屈折が生まれ、単色では表現できない色合いになる、そんなところが魅力だと思います」

スカイハイ SKY-HI
本名、日高光啓(ひだかみつひろ)。1986年、千葉県生まれ。2005年にAAA(トリプル・エー)のメンバーとしてメジャーデビューし、同時期からSKY-HIとしてソロ活動をスタート。20年に代表取締役CEOとしてマネジメント/レーベル「BMSG」を設立。21年にボーイズグループ発掘オーディション「THE FIRST」を主催、HuluやTVerのほか日本テレビ系「スッキリ」で放映され大きな反響を呼んだ。プロデュースを手がけたBE:FIRSTのデビュー曲「Gifted.」はアメリカのビルボード「Hot Trending Songs」で1位を獲得。自身の5枚目のアルバム『八面六臂』もリリース。22年2月5日(土)より全国6都市にて『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』を開催予定。
https://bmsg.tokyo/
Instagram:@skyhidaka

photography: Yuka Uesawa hair and makeup: Megumi Shiizu interview & text: Maki Shibata

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